不動産物件情報管理システムで…
生成AIを活用してみた件♪
本資料では、AppSheetで開発した不動産物件情報管理システムに最新のAI技術を活用した機能を組み込み、ブラッシュアップした事例をご説明します。物件概要情報のAI-OCR的な読み取りからシステムへの自動登録、そして自社フォーマットでの出力まで、一連の流れを解説します。このブラッシュアップにより、データ入力の手間を削減し「業務効率の向上」「ヒューマンエラーの低減を実現しました。
2025.4 株式会社ビーライン CS本部
1. 物件情報登録における課題
多くの不動産会社では、物件情報の管理に多大な時間と労力が費やされています。取り扱う物件の情報が含まれる物件概要書は、紙媒体やPDFなど様々な形式で存在し、これらの情報を手作業でシステムに入力する必要があります。
主な課題点
登録する項目が多く、手作業による入力作業は膨大な時間を要します
人的ミスが発生しやすく、データの正確性に問題が生じます
入力作業に人員を割かなければならないため、人件費が増加します
物件情報が含まれる各社の概要書のフォーマットは統一されておらず、登録する情報の把握は目視に頼るしかありません。
特に取扱物件数が多い企業では、これらの課題がより顕著になり、業務効率の低下やコスト増加につながっています。また、入力ミスによる誤った情報の流通は、顧客との信頼関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。物件概要書の様式は発行元によって異なるため、情報の標準化も困難な状況です。こうした背景から、生成AIによる業務改善を検討しました。
2. 生成AIによる物件概要書の読み取り
最新の生成AI技術を活用して、様々な形式の物件概要書(PDF)から必要な情報を自動的に抽出します。今回はLLMにGoogle Geminiを選定しました。わたしたちが磨いたプロンプト(AIへの指示)で、精度の高いAI-OCR技術を実現しています。従来は人が読み取っていた複雑な情報を正確に識別し、構造化されたデータに変換します。
AIが抽出する主な物件情報
物件の基本情報
(物件名、種別、構造、築年月 等)
所在地情報
(住所、最寄り駅 等)
価格情報
(販売価格 等)
面積情報
(土地面積、建物面積)
設備情報
(間取り等)
法的情報
(権利関係、法令上の制限、契約形態 等)
今回、実装したAI読み取り機能の特徴は、様々なフォーマットのPDFファイルをインプットできる柔軟性にあります。紙媒体をスキャンしたPDFファイルはもちろんですが、例えば、メール本文に記載される形で届いた物件情報内をPDFファイル化したものも一定の精度で読み取ることに成功しています。また、不明確な情報や認識できない項目がある場合は、確認を促す機能も実装可能です。人間の判断を適切に組み合わせることで、高い精度と効率を両立できると確信しています。
3. 不動産物件情報管理システムへの自動登録
情報抽出
AIが物件概要書PDFから情報を抽出
データ変換
抽出情報をシステムに登録できる形式に変換
自動登録
システムに情報を格納
ユーザーの確認・検証
登録情報の正確性を確認
AIによって抽出された物件情報は、データの前処理を経て、不動産物件情報管理システムに自動的に登録されます。この登録プロセスでは、データ項目に合わせたチェックや変換が行われ、システムに登録可能なデータ形式に加工し、システムに登録されます。従来、この工程では担当者による手作業での入力が必要でしたが、自動化により入力時間を約80%削減できるようになりました。
時間削減だけではない生成AIによる自動登録のメリットとして、入力ミスの削減、データ品質の向上等も挙げられます。営業担当者が掴んだ物件情報の社内情報共有もスムーズになり、関係者が最新の物件情報にいつでもアクセスできるようになります。これにより、顧客対応のスピードと質が向上し、成約率の向上にも繋がる期待が生まれます。
*参考 システム概要図
情報元の物件概要書
アップロード/登録
様々な形式の物件概要書を
システムに取り込む
生成AI 読取処理
高精度な情報抽出を行う
データベース管理
構造化された物件情報を安全に保管・管理
検索・活用
蓄積された情報を
多様な目的で活用可能
帳票出力
取り扱う物件情報を
自社フォーマット概要書で出力
当システムはAppSheetをプラットフォームとしたクラウドシステムで構築しました。インターネット環境があればどこからでもアクセス可能です。AppSheetで構築したシステムは、システムを拡張性しやすいことも大きな特徴です。API連携も得意ですので、他の社内システムとのとの連携も実現できます。さらに、モバイル対応により、外出先からのアクセスも可能で、営業活動の効率化にも貢献できるでしょう。
*参考 システム UI
*このシステムはAppSheetをプラットフォームとしたクラウドシステムで構築しています。
*参考
概要書作成機能
Excel出力
テンプレート
自社オリジナルのテンプレートを作成。
複数のテンプレートを用意しておくことで、例えば、案件種別毎に応じた概要書の作成も可能です。
カスタマイズデザイン
出力する項目の選択や並び順の変更、会社ロゴの挿入など、自由なカスタマイズが可能です。必要に応じて写真やコメントを追加することもできます。
Excel以外のファイル形式での出力
お客様のご要望に応じてPDFで物件概要書を出力することも可能です。また、物件概要書ではなく、物件情報メールを作成し自動送付するプロセスを実装することも不可能ではありません。
システムに登録した物件情報を「概要書作成」機能を使用し、Excelファイル形式で出力することができます。これにより、自社のフォーマットに沿った統一感のある物件概要書を簡単に作成できるようになります。従来は情報を手動で転記し、レイアウトを調整する必要がありましたが、システムから出力することで、これらの作業が不要になります。
出力されたExcelファイルは、そのまま印刷して顧客に提供することも、電子メールで送信することも可能です。また、Excelファイルなので、必要に応じて追加の編集も容易に行えます。この概要書出力機能により、資料作成にかかる時間を大幅に短縮でき、営業担当者は顧客対応や営業活動により多くの時間を割くことができるようになります。さらに、統一されたフォーマットで作成されることで、会社のブランドイメージの強化にも貢献します。
4.導入事例と効果
A不動産株式会社(神奈川県)
神奈川県を中心に展開する不動産会社。月間約500件の物件情報を扱っています。システム導入後、物件情報入力の工数が大きく削減され、2名の担当者が他の業務に集中できるようになりました。また、入力ミスによる顧客トラブルが月平均5件から1件未満に減少しました。
導入効果の数値化
82%
時間削減
物件情報入力作業時間
65%
コスト削減
資料作成関連コスト
85%
ミス減少
データ入力ミス発生率
お客様の声 ご担当者様
「ブラッシュアップ前は、物件情報の入力と確認に多くの時間を費やしていましたが、生成AIのおかげでその時間を営業活動に回せるようになりました。概要書出力機能も、統一感のある美しい資料を即座に作成できるため、営業しやすいです。」
お客様の声 代表者様
「システム導入の決め手となったのは、既存の業務フローを大きく変えることなく、段階的に自動化を進められる点でした。2度目のブラッシュアップでついに生成AIを活用した機能を導入できたことは、純粋なコスト削減にもつながり、かつDX推進のモチベーションを高めてくれています。」
業務効率の向上だけでなく、従業員の満足度向上等の副次的な効果も感じていらっしゃいます。単純作業から解放された従業員が、より創造的な業務や顧客対応に注力できるようになること、クラウドベースのシステムで、場所を選ばず業務を遂行できる点も高く評価されています。
5.まとめと今後の展望
業績向上
業務効率化による収益性の向上
顧客満足度向上
正確かつ迅速な情報提供による信頼構築
業務効率化
自動化による作業負担の軽減
情報の一元管理
物件データの統合と標準化
不動産物件情報管理システムは、生成AIの活用による自動化を通じて、物件情報の入力から出力までのプロセスを大幅に効率化します。これにより、人的ミスの削減、業務時間の短縮、コスト削減といった直接的な効果だけでなく、従業員の働き方改革や顧客満足度の向上など、多面的な価値を提供します。
今後の展望としては、実現したAI-OCR機能の精度をさらに高め、生成AI技術を活用した物件の価格予測や需要予測など、データ分析機能の強化を描いています。また、売買契約管理システムとの連携なども実現できれば、不動産業界の中小規模事業者のDX推進に寄与できるものと考えています。
本システムに関するお問合せ、ご相談は、下記連絡先までお気軽にお問い合わせください。御社の業務環境や規模に合わせたカスタマイズプランもご提案いたします。なお、当社は中小規模/個人の事業者様のDX推進を支援している企業です。大規模事業者様は、当社ではなく大手SIer様にご相談願います。よろしくお願いいたします。
お問い合わせ先:株式会社ビーライン CS本部 TDユニット sales-all@bee-line.co.jp
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